企業がフリーランスと取引をする場合、フリーランスに「注文書」や「発注書」を発行するケースは多くあります。また、フリーランスから「注文請書」を発行してもらっている企業も多いでしょう。このように、ビジネスの現場では頻繁にやり取りされる注文書・注文請書ですが、それぞれの法的効力を正しく理解している担当者様は少ないかもしれません。今回は、注文書・発注書・注文請書の役割や法的効力、契約書との違いなどについて解説していきます。
注文書の法的効力や注文請書との違いとは?契約を成立させるために重要なこと
企業がフリーランスと取引をする場合、フリーランスに「注文書」や「発注書」を発行するケースは多くあります。また、フリーランスから「注文請書」を発行してもらっている企業も多いでしょう。このように、ビジネスの現場では頻繁にやり取りされる注文書・注文請書ですが、それぞれの法的効力を正しく理解している担当者様は少ないかもしれません。今回は、注文書・発注書・注文請書の役割や法的効力、契約書との違いなどについて解説していきます。
CONTENTS
■注文書とは?注文請書とは?
なお、下請法が適用になる取引においては、親事業者から下請事業者へ発注内容を明確に記載した注文書などの書面(いわゆる「3条書面」)を発行することが義務付けられています。下請法に則った注文書の書き方は、以下の記事で詳しく解説しています。
>> 下請法に沿った発注書(注文書)の書き方を解説! – pasture
■注文書・注文請書の法的効力
注文書や 発注書、 注文請書の法的効力を理解する前提として、「契約の成立に必要なこと」についてご説明します。
民法上、契約が成立するには、一方当事者による「申込み」と他方当事者による「承諾」が必要だとされています。申込みと承諾があることで、当事者双方の意思が合致したものとして契約が成立します。
なお、契約成立のためには、契約内容について当事者間の意思の合致さえあればよく、意思表示の形式は問われません。申込み・承諾の意思表示は必ずしも書面でおこなわれる必要はなく、口頭でおこなわれた申込み・承諾であっても有効な契約として成立します。
●契約書と注文書や発注書・注文請書の違い
上述のとおり、注文書・ 発注書 は、相手方に対して発注を申込むために書面です。あくまでも一方的な意思表示に過ぎないため、原則として注文書単体では法的効力を持たず、契約が成立することもありません。注文請書も、相手方に対して一方的に承諾の意思表示をする書面です。注文書と同様に、注文請書単体では法的効力を持たず、契約が成立することもありません。
■注文書のみで契約が成立するケースも
上述のとおり、原則として注文書単体では法的効力を持ちませんが、注文書のみで契約が成立する場合があります。それが以下のケースです。 取引基本契約書とは
●基本契約で「注文書・発注書のみで契約が成立する」ことを合意している場合
当事者間で、「発注者が受注者に注文書を交付することにより個別契約が成立するものとする」といった規定のある基本契約書(取引基本契約書)を交わしている場合があります。この場合は、基本契約書の規定どおり、注文書のみで契約が成立します。基本契約書の詳細は後述します。
▼商法509条(契約の申込みを受けた者の諾否通知義務)
1. 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。
2. 商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす。
■継続取引の際は「基本契約書」を交わしておこう
●基本契約書とは?
企業が外部の事業者と継続的な取引をおこなう場合、たとえば、「成果物が納期までに納品されなかった場合はどうするのか?」「成果物に瑕疵があった場合はどのように対処するのか?」「対価の支払いはいつまでにおこなうのか?」など、基本的なルールを事前に明確にしておく必要があります。このような基本ルールを決めるために用いられるのが、「基本契約(取引基本契約)」です。
基本契約書(取引基本契約書)は、事業者間で反復継続される個々の取引(個別契約)に共通して適用される条項について、あらかじめ合意しておくための契約書です。
契約書作成の基礎 (1)履行方法、受入検査等
また、取引基本契約を締結する当事者にとって、個別契約がいつ、どのような要件で成立するかも重要です。
買主としては、自社の顧客の要請に応じるため、注文書が発行されたときに個別契約が成立するという条項にして、注文書どおりの個別契約を成立させ自社の販売計画を達成しようとします。
これに対して、売主としては、以下の(2)で説明しますように、買主が品名、数量、納期等を記載した注文書を発行し売主がこれを確認して自社工場の製造キャパから見て履行可能であるかを検討した上で、請書等を発行して承諾することにしたいと考えます。
履行が困難な契約が成立して債務不履行責任を負うことは回避したいからです。
更に、買主としては、注文書を発行して2週間とか3週間後に突然に売主から請書等が送られて来ても遅すぎます。
そこで、買主は、注文書発行後3営業日以内に売主が買主に対して承諾拒絶の通知をしないときは、売主はその注文を承諾したものとし、注文書の条件で個別契約が成立するというような条項を入れようとします。
このような条項のドラフトに対しては、売主の営業・法務は製造部門と、3営業日以内であれば余裕を持って注文書記載の数量の製品を納期までに製造し出荷することの確認ができるか否かを協議しカウンタードラフトを作成することになります。
(2)商品の数量や納期などの情報
3. 受入検査
(1)瑕疵担保責任から契約不適合責任へ
売買について、今年(2020年)4月1日から施行されました改正民法により、これまで「瑕疵担保責任」だったものが、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの」(民法562条)であった場合に売主が責任を負うという「契約不適合責任」となりました。
その結果、これまで不特定物[1]も瑕疵担保責任が適用されるのか等議論がありましたが、契約不適合責任は、特定物、不特定物に関係なく、適用される規定として、整理されることとなりました。
この民法の改正に伴い、商法も「契約不適合責任」に改正されました。
(2)納品後のリスク
4. 想定されるリスクの検討及びリスクヘッジ
例えば、インターネットを利用したサービスを提供する場合などでは、どういったリスクが想定されるのか、細かく考えながら、契約書は作成されなければなりません。
インターネット回線の接続に不具合が生じた場合、サービスを利用する側のコンピューターに問題があった場合などには、サービスを提供する側には債務不履行がありません。
サービスを提供する側からすれば、どういった場合が債務不履行とならないのか、できる限り具体的に明記をしておいた方がトラブルを回避しやすくはなるでしょう。
5. まとめ
また、売主は買主から金銭を支払ってもらう立場であり、契約書の締結交渉をする上で不利な立場になりやすいため、売主側に有利な内容は元より、リスクを軽減した内容を盛り込んでも、買主は通常その修正内容を容易に認めません。
そのため、露骨に売主の責任(リスク)を大幅に軽減するような内容を盛り込むことは難しいケースも少なくありません。
通常、交渉力のある買主側のひな形で契約締結交渉がはじまりますから、契約書の交渉をする上では、事前に、自社にとって重要なリスクを含む条項をピックアップし、各条項につきどこまで譲歩できるかを関係部署間でコンセンサスを得ておく必要があります。
そして、条項ごとに第一修正案(売主のリスクをかなり軽減する内容)、それが拒絶されていたときの第2修正案、そして第3修正案など、徐々に譲歩の幅が大きくなる条項案を複数準備しておいて交渉することが有用です。
また、自社に不利益な内容の条項間のバーター取引の戦略も予め関係部署と協議して置くべきです。
例えば、重要なリスクを含む条項A、B & Cがある場合、最もダメージが大きい条項Aのリスクを軽減するため、条項Bについて譲歩するから、その代わりに条項Aの修訂案を認めろ、という交渉方法です。
1. はじめに 今回は、債務不履行に伴って生じる解除、損害賠償の条項を中心に説明をしていきたいと思います。 特に、2020年4月1日から施行されました改正民法により影響が生じやすそうな内容を中心に説明いたします。 2. 解除 (1)民法改正により検討すべき事項 民法改正により、解除の要件は大幅に変更されています。 解除制度は契約関係から債権者を離脱させるための制度に位置付けが変更さ.
1. はじめに 今回は、① 目的物が滅失した場合の責任(危険負担)、および、② 目的物の品質に関連する条項(品質保証)の2つの事項につき注意点を説明していきたいと思います。 災害等が多い昨今においては、滅失した場合の責任は重要性のが高いテーマになっていますし、また、メーカーに対する品質保証責任の要求は年々厳しくなってきていますので、契約書の条項に不備がないか確認が必要です。 2. 危険負担 .
1. はじめに 今回は、債権回収および知的財産の2点に関連する条項を中心に説明してまいります。 企業は、売掛金があっても安心せず、債権回収のために、最善を尽くさなければ、資金繰りに問題が生じ、経営破綻しかねません。 また、知的財産は、他社が保有する特許権を侵害するケースなどの場合、巨額の損害賠償義務を負うこともある重要なテーマです。 以下、具体的に説明してまいります。 2. 債権回収 .
取引基本契約書とは
★ZIP圧縮しています。解凍する際にパスワードをきかれますので、1234 と打ち込んで下さい。
出てきたフォルダの中に、2つのファイルが入っています。
「売主有利」の契約書雛形と「買主有利」の契約書雛形がセットになっています。
売主側が契約の提案をする場合は「売主有利」の契約書雛形、買主側が契約の提案をする場合は「買主有利」の契約書雛形を使用して下さい。
そして交渉の過程において、双方の雛形に記載された条項を取捨選択して、売主と買主の双方が納得できるものとして下さい。
★『売買基本契約書(売主有利)』に含まれる条項
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第1条(目的、物品の売買)
第1項:本契約の目的に関する規定です。2020年民法改正により、契約解除を主張したり、契約不適合責任に基づく請求をしたりする場合に、契約の目的が重要視されることになったため、契約書に契約の目的を記載しておきます。
第2条(基本契約性、個別契約の成立)
第1項:基本契約と個別契約に関する規定です。
→本契約と個別契約間にて規定が異なった場合の取扱いを定めていますが、ここでは「個別契約が優先する」としています。
もちろん「本契約が優先する」と規定することも可能ですが、個々の業務の実情に合わせた規定を個別契約に定めたほうが臨機応変に対応できることから、個別契約を優先させることが一般的です。
第2項:「売主がこれを承諾したとき」に個別契約が成立するものとしました。
→より具体的には、「売主が買主に対し注文請書を交付すること」等で、「売主がこれを承諾した」ことになります。
→売主側からの注文請書の交付を待たずに買主側からの注文書の交付のみで個別契約が成立とする場合、売主が注文書の交付に気がつかなかった場合に債務不履行責任を負う可能性があります。
第4条(品質保証)
売主有利とするには、品質保証の条項そのものを規定しないのもひとつの方法です。
ここでは、「定められた使用方法を用いる場合に限り」という文言を加えることにより、保証の範囲に制限を設けています。
第5条(支給)
買主からの支給品が必要となる場合、本条項を規定して下さい。
→ここでは、買主の一方的な条件ではなく、売主と買主が協議して条件を定めるものとしています。
第7条(商品の納入) 取引基本契約書とは
売主有利となるように、納入に要する費用を買主の負担としています。
→納入の費用は売主が負担するのが原則(民法第485条)なので、買主の負担とするには本条のように特約を設ける必要があります。
第8条(商品の検査)
第1項:売主として、買主からの検査終了の通知がない場合の手当を規定しています。
第2項:売主は、買主から通知を受けた場合には瑕疵の存否内容を自ら再調査できるようにするため、このような規定を定めます。
第4項:引渡しの完了時を明確にしています。また、売主有利となるよう、引渡し完了により責任を免れる旨を規定しています。
第15条(遅延損害金)
【遅延損害金等について】
→下請法や消費者契約法にならい、年率14.6%としています。
第16条(契約不適合責任)
契約不適合責任を一切負わないとするのが、売主に最も有利です。
本条項では売主が契約不適合責任を負担する場合でも、買主からの通知の期間を制限し、それ以降は負担しないこと、不適合が発見されたとしても売主が任意の方法で対処できることを規定しています。
この場合、売買基本契約書(買主有利)第17条(契約不適合責任期間経過後の措置)に対応する規定は不要となります。
第23条(損害賠償)
売主と買主の、相手方に対する損害賠償に関する規定です。
赤字箇所は、損害賠償の範囲を限定するものです。(必要に応じて、全部または一部を残すか削除して下さい。)
【損害賠償の範囲:民法関連条文】
下記条文(民法第416条)が規定する損害賠償の範囲では過大な場合は、契約にて損害賠償の責任範囲を限定します。
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民法第416条(損害賠償の範囲)
1.債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2.特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、または予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
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第26条(契約解除)
★2020年4月1日施行予定の改正民法により、新たに無催告解除できる場面が認められました(改正民法542条)。
→「催告解除」とは、契約を解除する前に、相手方に対して契約の履行を督促する手続き(「催告」といいます)をとらなければならない解除の方法です。
→「無催告解除」とは、相手方に対して契約の履行を督促する手続き(「催告」といいます)をとらずに、いきなり解除する解除の方法をいいます。
第30条(連帯保証人)
売主有利とするため、買主に連帯保証人を付けています。
(連帯保証人を設けない場合は関連箇所を削除して下さい。)
★2020年4月1日施行予定の改正民法に合わせた規定としています。
第1項:連帯保証人が個人の場合、契約締結時に極度額(連帯保証人の責任限度額)を定める必要があります。(極度額を定めていない連帯保証条項は無効とされます。)
第2項:連帯保証人が個人の場合、受託者は連帯保証人に対して、契約に先立ち、ここに定める項目について情報提供する必要があります。
★『売買基本契約書(買主有利)』に含まれる条項
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第1条(目的、物品の売買)
第1項:本契約の目的に関する規定です。2020年民法改正により、契約解除を主張したり、契約不適合責任に基づく請求をしたりする場合に、契約の目的が重要視されることになったため、契約書に契約の目的を記載しておきます。
第2条(基本契約性、個別契約の成立)
第1項:基本契約と個別契約に関する規定です。
→本契約と個別契約間にて規定が異なった場合の取扱いを定めていますが、ここでは「個別契約が優先する」としています。もちろん「本契約が優先する」と規定することも可能ですが、個々の業務の実情に合わせた規定を個別契約に定めたほうが臨機応変に対応できることから、個別契約を優先させることが一般的です。
第2項:「売主がこれを承諾したとき」に個別契約が成立するものとしました。
→より具体的には、「売主が買主に対し注文請書を交付すること」等で、「売主がこれを承諾した」ことになります。
→売主側からの注文請書の交付を待たずに買主側からの注文書の交付のみで個別契約が成立とする場合、売主が注文書の交付に気がつかなかった場合に債務不履行責任を負う可能性があります。
第5条(支給)
買主からの支給品が必要となる場合、本条項を規定して下さい。
→ここでは、買主所定の条件で支給することを定めています。
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